「体育館では、裸足で走らない!!!」なんて、よく言われませんでしたでしょうか?
運動に伴う疲労感がなぜか強いなんて感じる方は、体力が足りないという考えとは違った評価をしなくてはいけない場合があることをご存じでしょうか?
運動が思わぬ貧血症状を起こす可能性が指摘されています。
スポーツ貧血…その中でも頑張ってしまう方に起こりやすく、気づきづらいと言われている溶血性貧血の一つ「行軍血色素尿症」について、今回は書き綴って行きたいと思います。
スポーツをしている方は、ぜひ一読しておくことをおすすめします。
貧血とは
赤血球は、身体全体へ「酸素」を運ぶことは、良く知られていますが、貧血とはこの運び手の赤血球が少なくなってしまった状態のことを指すのです。
つまり、どんなに酸素と栄養があっても、運び手が少ないと、結果的に細胞の機能が低下してしまうということなのです。
成人男性 Hb13g/dl 以上 Ht 33% 以下
成人女性・小児 Hb12g/d 以上 Ht 36% 以下
妊婦・幼児 Hb11g/dl 以上 Ht 33% 以下
※Hb:ヘモグロビン値
Ht:ヘマトクリット値(血液中の血球の割合)
貧血の基準は、いくつかありますが、概ね変わりません。
また、外見上の変化や症状でも、疑わしいと判断できるものもあります。
例:頭痛・めまい・眼瞼結膜蒼白・匙上爪など
貧血の種類
鉄欠乏性貧血
ヘモグロビンの主材料の鉄分が少ないことによって起こる
失血性貧血
出血により起こる
巨血芽球生貧血
赤血球が作られるときに必要なビタミンB12や葉酸が不足して起こる
再生不良性貧血
血液を作る骨髄の機能低下により起こる。
溶血性貧血
赤血球が破壊されることによって起こる。
⇒足の裏の毛細血管への衝撃により起こるのが、「溶結性貧血」なのです。
行軍血色素尿症とは
つまり、足の裏にある細くて弱い毛細血管を、素足や激しい運動による衝撃によって、赤血球が破壊されて、ヘモグロビンが漏れ出し、血尿が出るということなのです。
赤血球が破壊され、ヘモグロビンが漏れ出すということは、つまり「溶血」ということになるので、「溶血性貧血」の中に分類されるというわけなのです。
見た目に尿が赤くなかったり、溶血量が少ない場合は、検査結果になかかな引っかからないため、診断が難渋するとも言われているのです。
行軍血色素尿症の3症例
1)バレー部の中学3年生(仰天ニュースより)
小学生の頃から有望選手であったが、悩まされていたのは、「ひどい疲労感」だったそうです。
試合や練習後に、疲れ果てて話もできない状態で、いつも横たわってしまうほどで、先輩達や両親は、ただダラけていると思われていたそうです。
本人は、努力が足りないとずっと思っていたそうです。
高校に入って、指導者が異変に気が付き、病院受診を勧められて、そこでひどい貧血状態であったことが判明したそうです。
その後の治療で回復し、苦手だった長距離走でも、ぶっちぎりのトップになるほどになったそうです。
2)剣道部の中学3年生(日本内科学会誌より)
中学一年生の時から、剣道部に所属しており、踏み込みは随時行っていたが、三年生になり、さらに体重を乗せての踏み込みが行えるようになったそうです。
部活時間が長くなってきた頃から、血尿が出るようになったとのこと。
血尿と溶血所見、運動エピソードなどから、行軍血色素尿症と診断されたそうです。
検査・治療が開始され、部活動引退後は、血尿発作はなくなったそうです。
3)マラソンの40代女性(鹿児島市医師会より)
2年間マラソンを続いているが、めまい・疲労感・頭痛等を訴えて、病院受診にて診断を受けたそうです。
貧血治療後、フルマラソンに参加できるほどに開封されたそうです。
私の心配
小学校で、いつも先生から「裸足で駆け回らない」とよく言われていました。
しかし、はだしは気持ちが良い。
そして、なぜか、はだしで走った方が早かったんですね。
そして、中学でも同様に、「裸足での運動は、足の裏の血球が壊れるから、やめなさい」と良く耳にしていました。
正直、足の裏がアーチ状になっているのは、衝撃を和らげる生理的な形をしているし、そんなに簡単に血球が壊れるのだろうかと思っていました。また、もし血管が傷ついたら内出血をするだろうから、そんなに気にするほどなのかと不思議でしょうがなかったです。
看護学校でも、そのようなことはあまり触れられなかったけど、毛細血管は弱くて細いということは学べました。赤血球が無理やり進んでいるような印象があるほど細いことを。
そして、看護師になり、さらにいろいろと学ぶ中で、やはり足の裏の毛細血管への衝撃で赤血球がダメージを受けて、貧血になるということを理解できるようになったんです。
足の裏で血球が破壊されるなんて、どのように検査をしたんだという意見も確かにある様子であるが、そのほかの要因が見つからず、貧血の治療と適切な運動への調整で症状が緩和・完治している患者が多くいるため、「行軍血色素尿症」の起こる流れと原因は「足の裏への衝撃」なのだろうと思います。
しかし、赤血球の破壊と再生のバランス機能があるため、多くは、運動の仕方や量の調整、そして何より衝撃吸収ができる靴などで緩和・回復します。
そのため、運動靴は本当に大切だと思います。
学生時代はサッカー部でしたが、ボールを蹴る練習ではもちろん「サッカースパイク」でした。
でも、ランニングやトレーニングの時は、「ランニングシューズ」を使っていました。スパイクはクッション性があまりないため、ランニングやトレーニングでは、足の裏がかなり痛みが残るし、疲労感に強いのは、経験者はよく知っている事実です。
コーチが「スパイクではなく、ランニングシューズ」を指示するのは、足底毛細血管への衝撃による血球破壊を懸念しての指導も含まれていたのだろうと、今ならわかります。
私が今使っているランニングやトレーニングにおすすめなシューズは、adidas の「Boost2」です。
歩いた時は、ちょっと驚いたけど、ふわふわした地面を歩いているような感じです。しかし、ランニングや運動時は、しっかり地面を蹴れるので、運動動作に問題ないし、足裏はもちろん、足首・膝・腰などを守られているような感じがするので、トレーニングにはまさにこれ‼って感じで気に入っています。
症状が継続したり、運動後の疲労感が強い過ぎる時などは、自分の体力が足りないと思わず、医療機関に相談することをおすすめします。
もちろん、その他の貧血症状や血尿が出るなんていう時は、ためらう必要なく医療機関へ受診した方がよいと思います。
現在、娘が素足が好きで、「どっしん、どっしん」と音がするほどの歩き方と走り方をします。
心配になってしまい、家の中ではスリッパを履くように促し、走る時はフォームを見ながら、疲れすぎないように気になるようになっています。
私自身も、素足が好きなのですが、やはり足の裏が痛くなる事があるので、室内ではスリッパを履いたり、外出中では足の裏の疲労や痛み、そして歩く時の足の着き方を意識しています。そして、もちろん靴にも気を付けるようにしています。
最後に
診断が難しい貧血の一つである、「行軍血色素尿症」について書き綴ってきました。
運動をする人は、やはり運動後の疲労感などは、やりすぎかな?体力が足りないから?なんて考えがちになるのは、至って普通なことです。
また、周りの人もそう思うし、最悪「ダラけて、情けない」なんて思う人もいるでしょう。
若年者に多い傾向もあるけど、年齢に関係なく起こりうる可能性がある「行軍血色素尿症」。
もし、運動後の疲労感が毎回強かったり、心配な方は、無理な運動スケジュールをせずに、適切な運動方法への見直しと、運動靴には気を使った方が懸命かもしれません。
部活動をしているお子さんがいる方は、運動後や帰宅後の状態を安易にだらけているとは思わず、少し話を聞いてあげると、違った見え方をすると思いますよ。
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